地図 「美濃広瀬」
レポ 梶谷
レポ 梶谷
早朝、大谷林道終点でKさんと待ち合わせ、沢登りの準備にとりかかる。地形図では、林道が、みやま谷出合までできている。しかし、現在は、土砂崩れで崩壊し、車はヘアピンカーブの手前までしか入れない。ここが、林道終点で、今では雑草の生い茂る小さな広場になっている。
スズメバチによう似とるクマアブがようさん飛んどる。ワテは大谷林道を歩いて、みやま谷に向かうつもりやったが、Kさんがボケとって「おい!道はこっちじゃ!」と、いらん方へ歩いて行った事が悲劇の始まりやった。
「地元民やからワテの知らん抜け道を教えてくれる。」と、思いこんどったワテもあまかった。しばらく行くと道がなくなり、最後は釣師がよく使っとる道を見つけ、ルンゼをロープをつたって大谷川に降り立つ。ここで、ワラジをはいとると、どこからともなく奴らがやって来る。呼んでもないのに、わんさかやって来るやないけ〜。オイオイ!クマアブだけじゃのうてメジロアブまで来とるやないけ〜。「こら!クマアブ!子分みたいな、ちっこいメジロアブまで連れてきよって、おめ〜は何をたくらんどるかの?このたわけ物めが!」
しばらくは、河原歩き。ようやくゴルジュに入ったと思ったら目の前に堰堤が・・・それもトリプル堰堤ときたやないけ〜。右岸から高巻きにかかるも潅木がらみの痛烈なヤブ漕ぎだ〜い。モンキークライミングにツタの絡まる潅木ヤブを強行突破。これは許せるが、ワテらの動きが止まったとたんに襲いかかてくるアブには、マイッタ・マイッタ。「男前のワテの唇を奪わないでくれ〜!」ヤブ漕ぎの最中に[危険だから、ここから引き返せ!]看板を見つける。思わず笑ってしまったやないけ。「ばかやろう!こんな状況で引き返せるか!」と、お頭をプンプンさせて、三つめの堰堤を越えた。
Kさんが、「悪いことをしたな。」と平謝りをするも、ここまで結構おもろかったし、いつ雨が降り出してもおかしくない天気だったので、ワテは「エエよ〜。」と返事をしといた。
その矢先やった。ワテとKさんが、数えきれないメジロアブの大群に取り囲まれとると気がついたのは・・・Kさんが、「梶谷君!百匹以上のアブがまとわりついとるで〜」と、教えてくれるも、それはKさんも同じ状況だ。虫除けスプレーで反撃に出るも、これだけおったんじゃラチがあかん。「ハンディータイプの火炎放射器じゃなきゃ太刀打ちできないやないけ〜」ワテらは、この場を早足で立ち去るも、メジロアブの大群は後からピッタリついて離れない。「こえ〜」
大谷川本流は奥美濃特有の泥臭い沢ではなく清らかな沢だ。大峰・台高の沢の雰囲気に近い。そこに、登りごたえのある滝がようさんある。「今日はエエ物件を見つけたで〜」
当然、きめ細かい記録はとるべきやし、写真は勿論のこと、遡行図やコース・タイムを書かなくちゃあかんけど、これだけのアブにチクチク攻撃をされると記録をとる余裕はない。少しだけでいいから立ち止まって休憩したいけど、それすら許してくれない状況だ。それでなくとも油断してたら、こいつらチクチク刺してくる。ここは、逃げにゃあかん。「ウゥ〜土倉谷での借りを大谷川でアブどもに10倍返しを食らってしもうたわ〜。なんで、こうなるんじゃい?」
アブに追われながらも、出てくる滝を、時には微妙なバランスで登ったり、時には、シャワークライミングやバンドをつたって乗り越えたりして、そこそこ沢登りを楽しむ。素晴しいゴルジュにブナ・ミズナラ、トチなどの自然林と、遡行してても、すがすがしい気持ちになる。
あいつらがいなければ、もっといい気分になれたはずだけど・・・
やがて、左岸から林道が合流。長洞谷・オリ谷と確認して歩いていくと一人の釣師に出会う。ワテらが先行するんじゃないかと気が気でない様子。ふと見るとワテらのすぐそばをスズメバチが飛んでるやないけ〜。アブの次はスズメバチかい・・・時刻は10時37分。「ここらが潮時かな。」と、考えたその時、Kさんが「僕ら林道にあがりますから。」と釣師にのたまった。この一声で、釣師も穏やかな顔に戻る。ワテも「今回はしゃあないな〜」と妙に納得したがな〜。その後、釣師のおっちゃんに本日の釣果[アマゴ8匹、内20センチ級が内2匹]を見せてもらう。
林道にあがり、みやま谷を確認しに向かう。今、ワテらが歩いとる道は、「山と渓谷」をはじめとして数多くのガイドブックに紹介されとるルートだども、なんと雑草ボウボウ状態になっとるやないけ〜。「こんなとこでヤブ漕ぎをするとは思わなんだ〜」と、言いながら突き進んでいく。
ようやくみやま谷出合にたどり着く。ここまで来るのに、こんなにエライめに遭うとは思わなんだ〜。みやま谷の奥には、頂上こそガスで見えないものの勇壮な蕎麦粒岳が見える。
「今に見てろ!」と思ったのはワテだけじゃなかった。Kさんも気持ちは同じで、この場で次回の山行計画[みやま谷遡行からカゴカケ谷下降]が決まってしまいました。今日の山行とは比べもんにならんくらいのハードで上級者向けルートになるのは間違いない。気合を入れなおそう。
帰りもヤブ漕ぎが続く。Kさんの話だと紅葉シーズンに向けて近々ハイキング道の草刈が始まるちゅう事。アブがおるので、ノン・ストップで林道終点に戻る。あいも変わらず、アブがようさん飛んどるので遊ランド・スキー場の広々とした駐車場へ車でひき返した。着替えをしとったら、山ヒルがようさん出てきおった。ここで、運悪く雨が降ってきた。ヒルが元気に車の周りを徘徊しだす。「てめ〜らは、ゾンビか?困ったちゃんだのう。Kさんのヒルがワテの所にやって来るやにけ〜。」樋上さんの言っとた通りになってしまった。「ヒェ〜」
「8月に奥美濃の沢に入るのは、よほどの沢好きだけだ。」と、言っとったKさんが夏の奥美濃の沢に入るのは初めてだったそうで、アブの多さにたまげておられた。今日は時期・天候と悪条件が重なってしまった。今回は、アブ・スズメバチ・山ヒルと奥美濃でたくましく生きとる生き物の怖さを、あらためて体感した一日やった。これからワテが奥美濃の沢に行くにあたって大切なことは、もっときわどい草付を登ったり、二本のザイルを連結した懸垂下降をやったり、また、懸垂下降等の支点つくりをする際、立ち木がない時、対応していく技術を実践する場としていかなきゃならんちゅう事。「頑張るけんね。」
○林道終点6:30・・・堰堤7:12・・・遡行終了10:40・・・みやま谷出合10:50・・・林道終点11:40=車=遊ランド・スキー場11:47

